薔薇 あなた…

選詩集

 

薔薇 あなた…

 

 

ぼくにとって薔薇 あなた
苦しいということ 声が
裂け目にかわること
満天の
星の両目が 手のひらにかわるとき
ぼくの彼方にさしだされたそれが
あなたの 眠る前の吐息を
夜のなかで 色のようにうけとるとき
クレヴァス、まばたきのうちに
それは無境の深淵へ落下する
あなたのなかで 薔薇 ぼくは言う
夜は その夜は鏡界にあると
そこでは水はいつも滴りおちるもの
沁みこまずに跳ねるもの
流れずに留まるもの
もういちど、クレヴァス
深淵をたたえた水面に落ちながら
いつまでも届かない 音
薔薇 そして降り注ぐ
あなたという剥奪

 

2003.05.29

コメント

タイトルとURLをコピーしました