(石英の、……)

選詩集

 

 

(石英の、……)

 

 

石英の、……光の、……灰の……
あわい息の震え

(たそがれの小舟を隠してある)
葦の茂みの
息づかいが渡る空、
水晶の環が描いた子午線に沿って
この、
ひと握りの空の破片を
太陽のようにまき散らす

蓮のような夢がささやく海で、
眠る夢の中の 灰よ

透明に刻み込まれた静脈の記憶を辿り
いま 地にこぼれるはじめての
一滴の雫のように わたしはひとり
約束の荒地に降り立った。

その午後、あなたがあらわれる
小舟に乗って
麻になびく風のように。
あなたは寄り添って古い壁画の話をする
それからもっと古い大きな樹木と空の話もした
そしてふたりは遅くまでささやきあった
言葉を持たない文字の
震える陶片の響きで

そしてわたしはあなたを抱く
ふたりの姿を 蓮の葉がそよぎながら夢みる
光のように

まばゆい塵の
彼方で

 

 

(20210223)

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