金星:愛、美、芸術、人間関係、ロマンス、調和~エリクサー

宇宙系

「あかつき」の観測データをもとに作成された金星の画像(Credit: JAXA / ISAS / DARTS / Damia Bouic)

 

 

金星 Venus(ヴィーナス):愛、美、芸術、人間関係、ロマンス、調和

下は太陽系の内縁部を回る4つの岩石型惑星の同縮尺の図だ。左から2番目が金星。

4つの岩石惑星を比較した画像。左から水星、金星、地球、火星。

金星は太陽系の中では地球にいちばん似ている星だ。何十億年も前は地球によく似た環境だったとも言われている。でも現在は異常な高気圧と高温の星で、水はなく、激しい嵐が吹きまくり、濃硫酸の雨が降るという、地球上の生命体では生きていけない世界に変貌している。

 

占星術での金星の意味

愛、調和、アート、音楽、協調性、芸術性、美、パートナーシップ、平和、文化、価値

 

ヴィーナスはローマ神話のウェヌスVenus、ギリシャ神話のアプロディテAphrodite、愛と美、豊穣と性の神。アフロディーテ、アフロディテ、アプロディーテーなどさまざまに表記される。
(本稿では引用文を除きアフロディーテと記すことにします)

 

 

ウェヌス(ローマ神話)

植物や庭園を司るローマの古い女神で、ギリシアのアプロディテと同一視される。このため、ローマ人の神話上の始祖である英雄アイネアスの母である彼女は、〈ゲンス・イウリア(イウリア一門)〉(アエネアスの子孫を自称する)の祖先で、ローマの町の守護女神と考えられている。
(『図説ギリシア・ローマ神話文化事典』より)

同事典はまたウェヌスはローマの産土神(うぶすながみ。ラテン語でインディゲスdi indigetes)の一人で、「豊穣と性行為全般を司る」神としている。ウェヌスの持つセクシャルなイメージをカバネルの絵はうまく伝える。

アレクサンドル・カバネル『ヴィーナスの誕生』1863年。

 

シリウスから金星を経て地球に転生してきたスタービーイングは多いと言われている。ポンペイの壁画にはその時の記憶の残像が描かれているかのようだ。イルカはシリウスと関係が深いとされており、この絵にはイルカに乗ったクピドが描かれている。

クピド Cupido とはギリシャ神話のエロス Eros にローマ人がつけた名。キューピッドのことだ。ブルフィンチの『ギリシャ・ローマ神話』にはこう紹介されている。

エロス(クピド)はアプロディテの息子で、恋の神であります。彼はいつも弓矢を持って、母に連れそい、神や人間の胸におもいの矢を射込みました。またエロスの弟のアンテロスと呼ばれる神があって、かなわぬ恋の復讐者ともなれば、相思の恋の象徴ともなっていました。初めエロスはいつまでたっても子供のままで成人しませんでした。アプロディテはそれを苦にして、ある時テミス(法の女神)に向かってこぼしますと、それはエロスが一人息子のせいだから、弟ができたらきっと大きくなると答えました。やがてアンテロスが生まれると、その言葉にたがわず、エロスはたちまち身体も大きくなれば、力も増したといわれています。
(ブルフィンチ『ギリシャ・ローマ神話』野上弥生子訳)

西洋絵画などで小さな子どもで描かれるクピドは弟が生まれる前の状態で、たくましい青年に描かれるのは弟アンテロスが生まれた後の彼なのだろう。

クピドに関するエピソードを書いたサイト↓
本当は怖い!エロスが愛した純真無垢なプシュケーの本当の姿とは

 

 

アフロディーテ(ギリシャ神話)

ゼウスとディオネの子という説と、ウラノスの男根をクロノスが切り取って海に投げ捨てたら精液がこぼれ出て波の泡と混ざり、それが美しい輝きを放ってアフロディーテが生まれた、という説があるという。上でご紹介したカバネルのヴィーナス画も泡から生まれた様子を描いている。ギュスターヴ・モローは泡から生まれ出るアフロディーテの姿をこんな風に描いた。

ギュスターヴ・モロー『アフロディーテ』1870年ごろ。

アフロディーテを描く際にはエロス(クピド)をセットで描くのが慣わしになっているようだ。

アプロディテ(ウェヌス)は愛と美の女神で、ゼウスとディオネの間に生まれた娘でありました。一説には海の泡から生まれたともいわれています。彼女が西風(ルビ:ゼフワー)に導かれて波のまにまにキュプロス(サイプラス)の島へただよい行くと、四季の女神たちが迎えて、美しく飾りたて、神々の集まっている天上の大広間へ連れ行きました。アプロディテの美しさに魅せられた神々はみんな彼女を妻に望みました。
(前掲『ギリシャ・ローマ神話』より)

 

こちらのウェブサイト↓にたいへん分かりやすくアフロディーテのことがまとめられている。
トルコおすすめ観光案内トルコの豆知識・お役立ち情報 ギリシャ神話の女神アフロディテとは?絵画・石像など美術作品も紹介

このサイトからアフロディーテについて引用。↓

元々は小アジア地域(現在のトルコのアジア側)で生殖や豊穣の女神として崇拝されていました。アフロディテという名前は古代ギリシャが由来ではなく、西アジアやアラビア半島で生活をしていたセム族の言語から来ているといわれています。

西アジアの女神信仰がアフロディーテの起源なのだという。セム族とは旧約聖書創世記9章などにあるとおり、ノアの子孫。

箱舟から出たノアの息子は、セム、ハム、ヤフェトであった。ハムはカナンの父である。この三人がノアの息子で、全世界の人々は彼らから出て広がったのである。
(創世記9:18-19 『旧約聖書』新共同訳より)

セムの子孫アブラム(のちのアブラハム)は「カルデアのウル」(創世記11:27-28)で生まれた。ウルはウルクとともにシュメールの主要都市として栄えた。ウルクの都市神は女神イナンナで、アフロディーテの起源となるのが彼女だ。愛と豊穣、戦い、そして金星の女神。メソポタミア神話ではイシュタール。

 

ちなみに、西アジアの女神信仰が東方に伝播し、大乗仏教と融合して観音信仰になっていったという説もある(『サンスクリット文法入門』山中元、国際語学社。2004年)。観音菩薩、観世音菩薩、観自在菩薩等々、菩薩は仏教の教義の上では男性だ。しかし民衆の女神への崇敬は圧倒的で、観音様の像や絵画は女性的なニュアンスが強調されたものになっている。

また、仏教系の女神として人気を博しているターラー(多羅菩薩)。観音菩薩の両眼からこぼれた涙がホワイト・ターラーと緑のターラーになったという。

 

イナンナ/イシュタール女神は世界各地の女神とつながっている。アフロディーテ、ラクシュミー、ターラー、クワン・イン、マリア、アマテラス、イザナミ、……

 

↓アフロディーテ、ヴィーナスを題材にした美しい絵画が収められているウェブサイト↓
The Birth of Aphrodite (Venus Anadyomene)

 

 

金星のデータ  (「名古屋市科学博物館 太陽系データノート2016」より)

地球からの距離 3950万~2億5970万km
太陽からの距離 平均 1億820万km
公転周期 約225日
自転周期 約243日
大きさ(赤道直径) 1万2104km
重さ(地球=1) 0.815倍
密度(水=1) 5.24倍
赤道重力(地球=1) 0.91倍
衛星の数 0
種類 地球型惑星

このデータからすると、金星の一日(自転周期)は一年(公転周期)より長いという地球人からしてみたら不思議な星になっている。一日のあいだに一年ちょっとが過ぎるので、タイミングによっては一日に2回ほどお正月が来るときもあるというわけだ。

初期の金星探査については、アメリカよりもソ連(今のロシア)のほうが熱心で、1960年代に次々に探査機を送り込んだという歴史がある。現在は各国が探査機を送り、冒頭でご紹介したような金星の過酷な環境が明らかになっている。日本も「あかつき」を打ち上げた。

 

金星の地名

金星の地形には、ラクシュミー高原、セドナ平原、ブリュンヒルト地溝帯、ガルボ火口、セオリツ溶岩円頂丘、ハトホル山など、世界の女神、女優、女性として業績を残した人物の名前が当てられている。

アフロディーテの名は金星で最も大きな大陸に冠される。

金星の地形一覧

 

【参考】
『図説ギリシア・ローマ神話文化事典』1997年。原書房。監修ルネ・マルタン。松村一男訳。
『ギリシャ・ローマ神話』初版1927年。改訂1978年。岩波書店。ブルフィンチ作。野上弥生子訳。
『聖書』新共同訳。
『仏教の女神たち』2017年。春秋社。森雅秀。
『シュメル―人類最古の文明』2005年。中央公論新社。小林登志子。
星読みテラス

 

 

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