開花するふたつの林檎のように

選詩集

 

光と
ゆるしとともに泉の波紋で
浄められた螺旋

あの日の
宙でかがやいていたふたつの林檎

わたしたちの
向こうからのささやきか
それともささやきか

熟した夢のように舞う音

壁に刻まれた雨のように
あるいは螺旋をかたどった文字
わたしから
わたしたちへと渡される瓶の中の
開封された手紙の

便箋の上からこぼれる文字の螺旋のように

中空に向かって羽ばたいたふたつの
光の眼

 

気高い山脈のふもとで
わたしが会いに来るのを待っていたあなた

うなずくそぶりで走りながら
わたしたちはふたつの林檎のように愛し合った

遠雷の彼方で飛ぶ鳥の涙のように
こぼれ落ちたオリーヴの羽根のように

わたしたちは中空で開花するふたつの林檎

うなずくように逆さにひらいた花弁の中から
宙のフィラメントが光を紡ぐとき

神殿の奥底にある砂浜の鏡面で
ゆるやかにねむる巻貝が
自身に象られた尽きることのない文様を見つめている

 

 

2022.11.11

 

 

 

 

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