ウクライナ情勢新展開。中国は?戦争と防衛戦争、日本の立場

身辺雑記

 

 

ウクライナ情勢。ロシア軍に対抗するウ軍兵士たちは善戦しているようだ。個人携行火器も過去と比較できないほどに発達し、ドローンも登場した。だがロシアは侵攻作戦全体を統括する司令官を任命、さらに主力をドンバス方面に指向した。戦場は、今後どうなっていくのか。

ロシア軍司令官就任でウクライナに新局面か?

ウクライナ情勢絡みで中国が台湾で事を起こすとすれば、ウクライナが泥沼化して米軍主力がヨーロッパ正面~中近東にかけてシフトして行ったケースか。北朝鮮と米軍との相関関係が参考になる。中東がザワザワしだすと米軍がアラビア海方面に動く。北東アジアでの米の軍事プレゼンスが低下すると、決まって北朝鮮が威勢のいいことを言い出してミサイルを撃ったり韓国と小競り合いしたりする。動きとしてはこれに似ている。

ロシアの“特別軍事作戦”初動時に最高指揮官がいなかったとは驚いたが、新しく任命された司令官はシリアなどでいろいろやってきた人物のようだ。今までロシア軍が弱すぎたのは作戦全体を統裁する指揮官が不在だったからなのか、と合点がいった。この先、主攻略目標のドンバス地域での戦闘の激化が予想される。今までのような気の抜けたような戦い方から一変して、強いロシア軍の姿が報じられてくるようになるかもしれない。

また、一般市民への残虐行為が増加する可能性がある。わたしは戦争と言葉を含むあらゆる暴力行使に反対し、そのうえで防衛戦争を含む正当防衛を否定しない立場を取っている。プーチンが軍事力の行使を決意したこのたびの作戦が、ロシアにとっての防衛戦争であったことも了解している。

プーチンの言い分もわたしなりに理解しているが、彼が命じた結果生じたことに拍手を送る気持ちには少しもなれない。これは相対するウクライナや米&NATOの態度についても同じだ。

何度でも言う。暴力行為によって受けた傷と苦しみを癒すことだけが、戦争に対するただひとつの人間的行為だ。防衛戦争を否定しないし、反戦平和の声を上げることを無意味だとも思わない。だが暴力に対して何が正しいのか、誰が間違っているのかは、苦しみにあえぐ傷を前にすれば明らかだ。

中国軍に大規模な上陸作戦ができるのか?“ダメなロシア軍”パターンも

台湾の面積は36,200㎢で、九州と同じぐらいの大きさ。島というか大島嶼で、中国が台湾を正規軍を使って落とすということはあまり現実的ではない。だが、アメリカの邪魔が入らないという条件が整えば、少し可能性が上がってくる。

現代の島嶼争奪戦と言えばフォークランド紛争だ。サッチャーの英国は機動部隊と旅団規模の数個戦闘団を送って島を奪い返した。これよりはるかに大きい台湾の場合、どれくらいの兵力を投入する必要があるのか。

第二次大戦で沖縄を陥落させた米軍が次に狙ったのが九州と言われる。オリンピック作戦と名付けられた作戦計画は実際に準備が進められていた。数十万の陸上兵力、二つの大きな空母機動部隊と支援艦隊、3個航空軍に加え、B29による航空支援も計画されていた。この大掛かりな陣立てでわずか九州南部の一部を確保する、という作戦だ。

昔の第二次大戦のやり方と現代戦とを直接比較するのにはちょっと無理があるけれど、参考にはなる。台湾は九州とちょうど同じくらいの大きさだ。米軍が九州上陸時に想定していたこんな大兵力を、中国の人民解放軍が動かせるのか?切れ目のない航空支援をともなう大規模で高度な水陸両用作戦を仕切る能力が彼らにあるのかというと、それはないと思う。

1万名程度の精鋭部隊を一部地域に上陸させて橋頭堡を築き、中国本土や空母機動部隊のエア・カバーを得ながら少しずつ占領地域を拡張するのだろうか。台湾海峡の海上補給路を、中国軍はちゃんと確保できるのか。日本の潜水艦はかなりうまいという話だから、輸送船が次々に沈められてしまうかもしれない。

台湾軍の反撃は熾烈だと思われ、もともとそんなに士気が高いとは思えない人民解放軍がどこまで戦えるのか?今回のウ情勢の“ダメなロシア軍”のパターンにハマる可能性が高い。

米軍に命令されて海自潜水艦が決死の突入をする可能性

米軍が軍事リソースの大半を欧州に割いたとして、欧州:東アジア=8:2ぐらいだったとしても、米軍の2割は人民解放軍にとってたいへんな驚異だ。台湾付近の海域に支援艦隊を長期にわたり遊弋させていれば、米攻撃型原潜が撃ってくるトマホークやらなんやらで大損害を受ける可能性が高い。ロシア黒海艦隊の「モスクワ」がネプチューン2発でしとめられたように、中国海軍がウクライナから中古で買ってきた安い空母だって、あっという間に撃沈されるかもしれない。

案外、海上自衛隊の潜水艦が極東米軍に「行ってこい」と命令されて、決死隊の覚悟で中国海軍機動部隊に肉薄して、大戦果をあげる可能性もある。こうなると日本の右翼人士の中の軽薄な一派がバンザイ三唱からのちょうちん行列に繰り出して、靖国通りは大騒ぎになるだろう。

だが「モスクワ」が沈められてからロシア軍の闘志に火がついたように、こっちの戦果は向こうの闘志の炎に油を注ぐのだ。この場合、米軍は手を汚さずに戦後「中国の船を沈めたのは日本軍だよ」と言い抜けしてしまうだろう。中国は日本本土の中の米軍基地がないエリアを注意深く選んで、そこに報復の弾道弾を撃ってくるかもしれない。米軍基地を避けるのは、米国とあんまりギスギスすると後がよくないからだ。その点日本なら心配ない。日米安保が機能するとは、こういうことを言う。

事前に西側と話をする中国人

中国が正規軍を押し出してきて台湾を取るというケースは、上策・中策・下策があったとしたら、下策だろう。中国の人はもともと戦争よりも商売の方が好きなのではないか。武力に訴える場合は、小規模な特殊部隊がかく乱する程度だと予想するが如何。頭のいい中国人なら、経済的な結びつきを強めて、親中派の政治家を軸にしてロビー活動で政治的な流れを作って、国際情勢のドサクサに紛れて統一に持ち込んでしまうだろう。戦争よりもそっちのほうがはるかにお得だ。

どうしても軍事力を行使したいのなら、たぶん尖閣諸島付近の制海権を確保するぐらいの軍事行動に収まるのではないか。事前にアメリカと「台湾と尖閣を取るからヨーロッパでは少し譲歩しますよ」と話をしてからだ。この場合、プーチンは中国という後ろ盾を失って干上がる。バイデンは中国に少しだけ歩み寄る格好をしてみせ、欧州の首脳たちは作り笑いで習近平と握手する。

 

カーツ大佐の予言

わたしは戦争と言葉を含むあらゆる暴力行使に反対し、そのうえで防衛戦争を含むいっさいの正当防衛を否定しない立場を取る。

フランシス・コッポラ『地獄の黙示録』でカーツ大佐がこれからの人類の戦争スタイルについて予測していた。ゲリラ戦、小部隊、特殊部隊が主体の紛争が主になっていくだろう、と。彼の最後のセリフは「……恐怖……恐怖……」だった。正規軍同士が遮蔽物のない開けた第一線で、お互いを暴露しながら激突するような戦争は終わった。これからは闇夜の不意打ちや、蛸壺に隠れた撃ち合い、特殊部隊の暗殺、狭いジャングルや山あいでの接近戦が主流になるのだろう。ナポレオン戦争的な闘いのやり方はもうないんだろうな、と思いながらマーロン・ブランドの演技を見ていた。

ウクライナ戦争はこの先どうなるのだろうか。

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