flora
白昼の袖部屋 切られた窓の外
白いエアの蒼ざめ
カンヴァス、
細い線を引いて
空の模様を描いていく
見えないモンシロチョウ
かたちなく翼をひろげ
透いた空からその中に向けて離れていこうとするものを
軌跡がつくる糸で
つなぎとめようとしている
たったいまの
夢
とだえがちに
しずかにわきあがる粒子のフローラ
星と土が逆さまになる刻
至近距離の空からこちらに向けて悲鳴が渡ってくる
透きとおる悲鳴が
音のない固体になり
歯車時計が静止する一瞬の隙をぬって
自由落下してくる
蝶がいまそこでしていた無形の飛翔型
その姿さながらに (ぼくは
カンヴァスの中にそれを描き入れてから
光のかたちに
それを折り畳む)目を
ひらいたら
視界いちめんに滲む赤い押し花のようなしるし
2003.07.11
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