選詩集開花するふたつの林檎のように 光とゆるしとともに泉の波紋で浄められた螺旋あの日の宙でかがやいていたふたつの林檎わたしたちの向こうからのささやきかそれともささやきか熟した夢のように舞う音壁に刻まれた雨のようにあるいは螺旋をかたどった文字わたしからわたしたちへと渡される瓶の...2022.11.11選詩集
選詩集《ソネット集より》背を伸ばせば手が届く高さに君はいて 背を伸ばせば手が届く高さに君はいて下にいるぼくに時々石をほうり投げてくるよけるのがへたで 痛いね石が当たると君はぼくを見てけらけらと笑う背景の空は快晴 芝生はみどり君の髪は風になびいてぼくは照れ笑いこの星ってまったくたいしたもんだこんな穏や...2022.10.15選詩集
選詩集(痛ましくも光のように……) 痛ましくも光のように飛びかい 満ちるものは両翼にかたどられ 時として雷鳥と星たちのはざまを駆けぬける沈黙の姿をした声形ある深淵よ ひびきよ 塵よ 根よ 青の梢よおまえは澪をたどり豊穣のひと房を光でなぞりながらこぼれた文字を渦のかたわらに 羽...2022.10.07選詩集
転生のための試論(まことの目、浄められた眼よ、…) この故に汝の内の光、闇にはあらぬか、省みよ。(ルカによる福音書11:35)(観世音菩薩普門品 Avalokiteśvaraに寄す)澄みきったやさしい眼のあなた類まれなる叡智の眼憐れみと慈しみに満ちた眼よ麗しい顔、麗しい眼、あなたは愛純粋な人...2022.08.27転生のための試論3
選詩集しご(子午)線 宙吊りにされたままの 空の斜めの夏至灰白色の音符の切れ目のない連鎖が黄道に沿って輪舞していく切れ目なく 切れ目なく 切れ目なくかすかなブレスこの間隙を縫って渦状に吹きつけてくる肌、紫、黒、白、の風のことばいやし いやされるわたしたちの根あな...2022.04.29選詩集
選詩集熱から 幅 へ レジスト 熱から幅へ 欠けてゆく 羽根、 / 澪の欠片を握りしめた眼が漣を 草のようにかなでる 澪の洩れた音を 羽根のように欠いていくレジスト 滅 ~ 花色 落ちていく すう ...2022.03.22選詩集
選詩集薔薇 あなた… 薔薇 あなた…ぼくにとって薔薇 あなた苦しいということ 声が裂け目にかわること満天の星の両目が 手のひらにかわるときぼくの彼方にさしだされたそれがあなたの 眠る前の吐息を夜のなかで 色のようにうけとるときクレヴァス、まばたきのうちにそれは無...2022.02.22選詩集
選詩集passage passageたそがれは夜に入れかわる 夜は冬に 冬は風の細かな震えに (入れ…… ……、り……)姿のない庭園がいつしか視界にあり……裏返す営みはいつまでも終わり続け……ぼくたちは黒い服から白い服に着替えている次の扉はなかったいや きみは違...2022.02.17選詩集
選詩集在りし日の記憶のために 在りし日の記憶のために蒼穹。遠くまで引き絞った弓の記憶秋がまた、ぼくの頭上から舞い落ちてくる。数えて ぼくを そのひとつに手のひらに重なり合って消える 秋の薄らぐ音符のひとつに。時のように終わる誰かの嘆き枯れた木立の合い間に ひとつだけ取り...2022.02.08選詩集
選詩集flora flora白昼の袖部屋 切られた窓の外白いエアの蒼ざめカンヴァス、細い線を引いて空の模様を描いていく見えないモンシロチョウかたちなく翼をひろげ透いた空からその中に向けて離れていこうとするものを軌跡がつくる糸でつなぎとめようとしているたったい...2022.02.07選詩集