火星:行動、リーダーシップ、勇気、肉体、エネルギー~エリクサー

宇宙系

2016 年 5 月 12 日、ハッブル宇宙望遠鏡による火星の写真。地球から 5,000 万マイルの距離。
Credits: NASA, ESA, the Hubble Heritage Team (STScI/AURA), J. Bell (ASU), and M. Wolff (Space Science Institute)

 

火星 Mars(マルス):行動、リーダーシップ、勇気、肉体、エネルギー

 

マルスはローマの非常に古い神で、戦争、春、若さを司るという。春の英語Marchの中にマルスが入っているのはそのためだ。また、『金星』の項目でご紹介したウェヌス(ヴィーナス。ギリシャ神話のアフロディーテ)とともに、ローマ人の守護神と見なされている。

 

占星術での火星の意味

活発、集中、自己中心的、単刀直入、力強さ、攻撃、闘争本能、自己主張
筋肉、運動エネルギー、刺激、炎症、発熱、アクシデント など

 

マルスはギリシャ神話のアレスArēsと同一視されている。

アレスについて『ギリシア・ローマ神話文化事典』(ルネ・マルタン著)は次のように説明する。

ギリシャ北部の半野蛮の地トラキアを起源とする戦いの神。ゼウスとヘラの息子でオリュムポス12神の一人だが、ゼウスをはじめ多くの神々に毛嫌いされている。戦闘を描く叙事詩の代表『イリアス』ではトロイア側に立って戦い、エリス(不和)やデイモスやポボス(恐怖と敗走)などの不吉な神々を引き連れて激しい白兵戦に打って出た。《人間の敵》《血で汚れた》《凶暴な》などがホメロス作品で最もよく使われるアレスの形容辞である。

軍神であるため、粗暴で野蛮な気質が物語では前面に出てきているようだ。

同じく戦いの神であるアテナは処女神にして知性と力を象徴する女神で、乱暴なアレスとは正反対のキャラクターだ。乙女アテナは女性の性の魅力を武器にしているアフロディーテともあまり良くなく、さらに美人コンテストでアフロディーテに敗れてしまったこともあり、その後勃発したトロイア戦争ではギリシャ側に付き、トロイア陣営のアフロディーテと対立した。このときアレスもアフロディーテと同じトロイア陣営だった。

アレスとアテナはトロイア戦争以外でもいろんなところでやり合っているらしく、あるときはアレスが槍の一撃を突き立てたのをアテナがサッとかわして、アレスの頭に大きな石をぶん投げて倒してしまったりしている。痛みにうめくアレスをアフロディーテが手を引いて助け、こうして彼は戦いの場から離脱する羽目になったようだ。

ギリシャ神話 → ローマ神話
アレス    → マルス
アテナ    → ミネルヴァ
アフロディーテ→ ウェヌス

 

『マルスとヴィーナス』ボッティチェッリ。1485年頃。

このようにアレスはアフロディーテとは仲が良くて、不倫の現場をアフロディーテの旦那のヘパイストスに押さえられ、さらし者にされたりと、散々だ。

 

火星のデータ (「名古屋市科学博物館 太陽系データノート2016」より)

地球からの距離 5580万~4億40万km
太陽からの距離 平均 2億2790万km
公転周期 約1年322日
自転周期 約25時間
大きさ(赤道直径) 6792km
重さ(地球=1) 0.1074倍
密度(水=1) 3.93倍
赤道重力(地球=1) 0.38倍
衛星の数 2
種類 地球型惑星

 

地球上の生命のDNAの大元はもしかしたら火星から来たのかも、という仮説がある。

太陽系の惑星形成期に、ちょっとした隕石が火星に派手に激突して、火星で生まれていた生命体ごと地面の一部をはぎ取って、それが地球に降り注ぎ、そこに降り着いた生命が地球で繁殖した、という説だ。

火星の重力は地球の3分の1ぐらいで、確かに地球の重力はわたしたちにとって少し重たいのかもしれない。いろんな病気や、頭痛、皮膚のたるみなど、重力に起因する身体的トラブルは多い。火星の重力の方がDNA的に合っている、という感じはわかる。

また、寿命が短いのも、本来は生物にとって劇物であるはずの酸素を吸う形態を選んだ地球上の多くの生き物の難点といえる。地球で最も栄えている種族は植物だと思われるが、彼らはCO₂を呼吸している。

 

 

その前後に軍神君臨す。

マルスといえばノストラダムスの大予言で、1999年の7の月に人類が滅亡の危機にさらされるという話が有名だ。

西暦のその年に人類は滅亡を免れたものの、こうした終末予言はいつどんな時でもわたしたちの憍りや油断への戒めなのだろう。

粗暴でいくさや争いごとを好むマルスの持つ属性は、たしかにわたしたちの一部だ。それはまたより良く生きたいと願う生命の原動力でもあるし、生きとし生けるものが地上で背負う宿命のようでもある。

マルスを思うことで、自分たちのあり方のひとつの側面を見つめることは、生命の重要な責務なのではないだろうか。

 

 

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